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  • 執筆者の写真水月 雪兎(Mizuki Yukito)

2019年海洋生物調査結果報告4(アオイガイの大量漂着と生態に関する考察)


ほぼ10年周期でアオイガイが大量に漂着するのですが、今年がその当たり年だったようです。

今年は人形作業に力をいれているのでビーチコーミングがままならないのですが、定点調査と生態調査は続行なのです。


あくまで私の調査記録から見えた事実であり、研究機関のように条件を一定に保つ事が難しいためアマチュアの調査結果としてみていただければと思います。


SNSなどから拾った情報によると今年はアオイガイが稚内周辺や礼文島でかなりの個体数が上がっているようですが、そこから宗谷海峡を回りオホーツク海は網走まで記録されました。

調査していないだけで根室辺りでも上がっていたかもしれません。





また漂着する数も多く生体入りの貝も打ち上げられる確立が高く、私も生まれて初めて一日で30検体(うち生体1固体、死亡4個体)を発見するに至りました。



これがアオイガイの本体ですね。

死亡していますが新鮮なので体色が残っています。




2019年に採集したアオイガイの殻長は、一番大きい個体で25cm、一番小さい個体で2cm、8cm~11cmが最も多く・・・とサイズもいろいろありました。













道央はハンターの多い激戦区なので正確な消長を記録するのは難しくあくまで自分の調査記録しかつけられないのですが、2019年の調査は9月下旬から10月下旬まで行いました。


生体の飼育も三日間という短い期間でしたが観察することもできました。


この状態で生きていたのですよね・・・。

殻長3cmです。



本当に今年はアオイガイについての見識が深まった年でありました。




積極的にネットで情報を集めていた訳ではないので(ネットの情報はあてにならないから)今年知った事も多かったのですが、今回の調査結果と合わせた生態についての考察をいくつか。


・漂着について。


約10年前の常識ではアオイガイの漂着は南方から北へ徐々に漂着が始まり、石狩管内までが主で北海道北部は稀だとい風に言われていました。

まだアオイガイの存在が広く知られたものではなかったための見落としだったのだと思いますがここ数年での傾向は漂着は北から始まり徐々に南に移行する。


しかし9月下旬から宗谷管内での漂着が多数見られた同時期に道央付近でも打ち上げられていた事から、「海流の影響」ではないのではないか?という疑問が沸いたのでした。


アオイガイはタコというよりイカに近い生態ではないかと。


繁殖期のイカは産卵の為に海草の林に集まります。

アオイガイのメスもそうだとしたら?

・・・アオイガイは抱卵するので産卵ではないのですが、仔タコが身を守りやすくかつ餌にありつきやすい海草の林を選ぶのは当然だと思う・・・。

漂着がピンポイントなのは、海流のせいではなく海草の分布のせいだとしたら?


アオイガイ漂着の目安としてコウイカを見つけるのがハンターの間では常識となっていますが、この二つの共通点が「産卵場所」だとしたら今まで海流で運ばれてくるという説が覆ることになります(結局骨や貝殻が流れ着くのは海流のせいなのだが)。


これは今度要調査ですね。


それからこれも漁師からの聞き取り調査ですが、お盆過ぎから9月には中身入りのアオイガイの死体が海底に多く見られるようになるそうです。

中身が他の生物に食べつくされた後も殻は海底にとどまり、台風による影響で岸に流れ着くそうです。



・殻について。


アオイガイは繁殖期にのみメスが殻を作るタコの仲間ということでしたが、殻長11cm以下のアオイガイには卵のうが発見できなかった事から、繁殖期のみ殻をつくるというのは間違いではないのか?と。


殻長3cmの生体も勿論抱卵しておらず、繁殖に関係なく殻を持っているのではないか?

オスには殻がなく、体長が3cmほどにしかならないというのも怪しい。

発見事例が少ないための仮説に過ぎないのではないでしょうか?


アオイガイは殻を浮き袋代わりにしているという観察結果もあるらしいです。

とするとオスに殻がないと言い切れなくなるのではないでしょうか?

メスにあれだけのサイズがあるのにオスは3cmで止まるというのはどうなんだろう?

軟体動物は外骨格がないので一気に成長します。

今後の発見に期待です。


あと殻に突起があるのと無いのの違いですね。

成長と共に突起がなくなるのかと思ったら、そうではなかった。

欠けてしまったわけでもない。





・生態について。


漁師からの私の聞き取り調査によると、アオイガイは夏場イカ釣り漁船の集魚灯に集まるのだそうです。

つまり走行性があるということ。

このあたりもイカに近いですね。


これは多分満月の夜に海表近くにペアリングのために集まる習性でしょう。

もし定説通りアオイガイのオスは大変小さいとすると、広い海の中で出会うのは難しいはずです。

ペアリングのために表層近くで「待ち合わせ」するのではなでしょうか?

海の生物ではよくある話ですがアオイガイも例外ではないかもしれません。


アオイガイの警戒色は赤、通常は白色なようです。


一枚目の写真で分かるように吸盤で壁にくっついていますが、結構強烈です。

一度張り付かれるとはがすことができない。




三日間飼育しましたが、やはりタコは難しい。

弱ってきたのでリリースしました。

給餌実験などやってみたかったです。






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